開催趣旨
東京大学物性研究所では、理⼯系の研究分野で現在少数である女性研究者のより一層の活躍及び割合増加をサポートするため、2021年度よりISSP Women’s weekというイベントを開催しています。 この期間中には部門・施設セミナーに加えて女子大学⽣や大学院⽣、女性研究者のためのイベントや研究交流会等を開催し、男女問わず学びやすく働きやすい場を作っていくための議論の機会を提供します。今年度も、11/8(土)~11/14(金)の期間をISSP Women’s week 2025とし、その期間内の11/13(木)に「研究交流会」を開催します。この研究交流会では講演者の皆様にご自身の研究テーマ、男女共同参画、ダイバーシティ推進などにおける各大学・研究機関・会社での取り組みをご紹介いただく予定です。
日時:2025年11月13日 (木)
開催場所:東京大学物性研究所6階大講義室 (形式:対面とZOOMのハイブリッド)
参加申し込み
こちらの 参加登録フォーム よりお申し込みください。
オンラインアクセスに関する情報は登録者のみに送らせていただきます。
臨時託児室の設置について
本研究交流会では講演者や参加者から希望があった場合は臨時託児室を設置する準備があります(*)。
詳しい内容については実行委員長 井手上 (ideue_at_issp.u-tokyo.ac.jp)までご連絡ください。
*他の物性研究所主催・共催の研究会等でも実施中です
協賛
学術変革領域研究(A)「1000テスラ超強磁場による化学的カタストロフィー:非摂動磁場による化学結合の科学」
本イベントは株式会社キオクシア様からの「女子学生の理系進学・女性研究者支援プログラム」に対する寄付金から支援を受けております。
プログラム アブストラクトはこちら
2024年11月13日 (木) (10:00 開場)
10:00 廣井善二 所長 開催挨拶
10:02 井手上敏也 実行委員長 趣旨説明
Session 1
10:05 森初果 教授(物性研究所)
「モノとヒトのダイバーシティ
~電子と水素がカップルした分子性機能物質の化学と物理~」
10:30 赤井恵 教授 (大阪大学)
「情報科学と物性化学が融合した高分子ニューラルネットワーク」
(10:55-11:10 コーヒーブレイク)
Session 2
11:10 阪田薫穂 准教授 (高エネルギー加速器研究機構)
「電極触媒の“今”を捉える!放射光で見る表面反応のリアルタイム観察」
11:35 坂本祥哉 准教授 (東北大学)
「放射光研究と子育ての日々から」
(12:00 – 13:30 ランチ交流会)
13:30 ポスターボードディスカッション
Session 3
14:30 浜口香苗 (株式会社豊田中央研究所)
「役割ごとの研究へのかかわり方 〜企業研究者の例〜」
14:55 高嶋梨菜 (キオクシア)
「企業における次世代メモリの開発現場」
(15:20-15:35 コーヒーブレイク)
Session 4
15:35 浦井瑞紀 助教 (物性研究所)
「有機伝導体の見せる量子物性」
16:00 梅垣いづみ 助教 (高エネルギー加速器研究機構)
「量子ビームに誘われてー企業研究者を経てアカデミアでー」
16:25 閉会
お問い合わせ
東京大学物性研究所 男女共同参画・ダイバーシティ推進委員会委員長
井手上敏也(e-mail: ideue_at_issp.u-tokyo.ac.jp “_at_”を”@”に変えて送信してください)
アブストラクト
森初果 教授(物性研究所)
「モノとヒトのダイバーシティ
~電子と水素がカップルした分子性機能物質の化学と物理~」
無限の自由度をもつ分子を基盤として、その集合体である有機結晶や結晶性薄膜という舞台において、有機ならではの新たな機能物性の創成を夢みて化学と物理の境界を行き来しながら研究を続けてきた。その中で、電子と水素がカップルした有機超伝導、および超プロトン伝導等について紹介する。また、研究を続けるために行ってきたヒトのダイバーシティ活動についても述べる。
赤井恵 教授 (大阪大学)
「情報科学と物性化学が融合した高分子ニューラルネットワーク」
我々は導電性ポリマー細線を電解重合で電極間に成長させ、神経様ネットワークをその場形成した。抵抗変化によりシナプス機能や非線形応答を模倣し、情報処理能力を示した。これらの技術は将来的な脳型情報処理素子・ニューロモルフィックデバイスの基盤技術となり得る。
阪田薫穂 准教授 (高エネルギー加速器研究機構)
「電極触媒の“今”を捉える!放射光で見る表面反応のリアルタイム観察」
水を水素と酸素に分解する「水分解用電極触媒」は、生成された水素をエネルギーとして活用できることから、カーボンニュートラルの実現に向けて世界中で研究が進められています。この電極触媒は、水素発生用電極と酸素発生用電極を組み合わせて使われますが、電極表面で起こる反応の仕組みにはまだ多くの不明点があります。特に水分解反応は、固体(電極)と液体(水)との界面で起こるため、固液界面でどのような化学種が生成され、どのように反応が進むのかをリアルタイムで観察することが重要です。
本講演では、酸素発生用触媒として用いられる酸化コバルトに焦点を当て、放射光軟X線吸収分光を用いて、電極触媒の固液界面での化学反応をリアルタイムで追跡した研究についてご紹介します。
また、私はこれまで国内外の大学や研究所に所属する機会がありましたので、それらの異分野・異文化での研究生活についても、少しお話しできればと思います。
坂本祥哉 准教授 (東北大学)
「放射光研究と子育ての日々から」
私は、学生時代から放射光を用いて磁性体の電子状態や磁気構造の研究に取り組んできました。博士号取得直前に結婚し、その後妻とともに渡米して第一子を、帰国して物性研に着任後に第二子を迎えました。今年の3月には東北大学へ異動し、現在は共働き夫婦として日々を過ごしています。本講演では、これまでの私のキャリアと研究について紹介するとともに、家庭と研究との両立についてお話しし、男性研究者として女性研究者の活躍やダイバーシティの推進にどのように貢献できるか考えたいと思います。
浜口香苗 (株式会社豊田中央研究所)
「役割ごとの研究へのかかわり方 〜企業研究者の例〜」
物性研で博士号を取得後、豊田中央研究所に入社しました。研究員、チームリーダー、管理職(部長相当)を経て、全社横断の研究企画や出向を経験し、現在は広報に携わっています。本講演では、役割の移り変わりにともない研究への関わり方がどのように変わったかを、家庭との両立の経験や豊田中央研究所のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みとあわせて紹介します。研究トピックは一例として、社内の分野横断体制をいかし多様な専門家と連携して進めたマイクロ飛翔ロボットを取り上げます。アカデミアと企業で環境は異なりますが、皆さまの参考になるお話ができれば幸いです。
高嶋梨菜 (キオクシア)
「企業における次世代メモリの開発現場」
近年、AIの普及やDXの進展に伴い、大容量かつ高速なメモリの需要が急速に高まっています。その有望な候補の一つが、spin-transfer torque magnetic random access memory(STT-MRAM)です。私は博士号取得後、キオクシアに入社し、STT-MRAMの研究開発に携わってきました。実験チームと協力し、物性物理の専門性を活かしてSTT-MRAMの材料特性を研究しています。本講演では、取り組んでいる研究内容に加えて、これまでのキャリアパスや研究生活の様子についてご紹介します。
浦井瑞紀 助教 (物性研究所)
「有機伝導体の見せる量子物性」
1980年に圧力下で超伝導を示す有機物質が発見されて以降、常圧も含めて多数の有機超伝導体が報告されている。それらの物質では超伝導以外にも様々な興味深い現象がみられている。本講演ではその中のいくつかの量子物性について、自身の研究例とともに紹介する。
梅垣いづみ 助教 (高エネルギー加速器研究機構)
「量子ビームに誘われてー企業研究者を経てアカデミアでー」
学生時代、物性物理を専攻し磁性を学ぶ中で中性子に出会い、博士号を取得後、中性子につられて、企業の研究者として研究人生を歩み始めました。
企業でミュオンと出会い、すっかりミュオンの虜となり、現在はミュオンの特性を活用したさまざまな研究を国内外のミュオン施設で展開しています。
研究紹介と、現在所属しているKEKの男女共同参画の取組み、ライフワークバランスに関してお話ができればと思います。
ISSP Women’s Week 2025
実行委員長 井手上敏也 (ideue_at_issp.u-tokyo.ac.jp)
実行委員 武田 晃、𠮷信 淳、佐野 涼太郎、中野裕義、中島 多朗、宮田 敦彦、松田 巌、三輪 真嗣、高木 里奈、Lippmaa Mikk
